かみつきざっき

とある海外大生の雑記

北米のリアルな新卒就活事情: 選考基準編

海外の日本人大学生の多くが持つのは、卒業したらどこで就職すればいいんだろう?という悩みです。

私も日本で育ったから卒業後は日本に帰りたいという気持ちはありながら、折角海外に来たのだからもう少し日本から離れた所で戦ってみたいという思いもずっと持っていました。

そんな中、実際にやってみなければ分からないことがきっと沢山ある! という考えから、私は日本の就活と北米の就活を同時進行で進めました。その経験から、北米で就活をする上で求められているものについて多くの発見があったので、それらの発見をこの記事に簡単に纏めたいと思います。この記事ではできるだけ一般的な話をする予定です。個人的な体験談や学生達がどのように就活に備えているかはまた別の記事に書きます。

試しに「海外 就活」や「アメリカ 就活」という組み合わせでググってみたんですが、テキトーな話で溢れていたので、あーこれは何とかしなきゃ…という思いもありました。

注意点

  • 私は北米の総合大学(だいたい世界大学ランキング20~50位くらい)に通っています。勿論、アイビーに通う超絶エリート様達に比べると格が数段落ちるのでそこのところを加味して読んで頂けるとありがたいです。
  • undergrad(学士レベル?普通の四年制大学?)プログラムなので、申し訳ありませんが短大や院やMBAの就活事情についてはよく分かりません。
  • 専攻はビジネスです(undergradのビジネススクール)。専攻によって選考プロセスも大分変わってくるので、ご注意ください。 
  • 割と人気の高い企業に応募する場合を想定しています(日本で言う一部上場企業レベルかな? レベルとかいう言葉はあまり使いたく無いのですが。)
  • 北米の大学生が北米の企業に就職することを目指している場合を想定しています。日本人採用枠等に応募する際にはまた違った選考基準が設けられると思います。

日本の就活

日本の新卒一括採用システムについては恐らく皆さんよくご存知ですし説明不要でしょう。

個人的には「一見新卒を守るシステムのように見えるものの、無駄なお受験戦争による身の削り合い、馬鹿な大学生の輩出、ブラック企業、いい加減な選考基準・不公平な選考プロセス、パワハラ・セクハラ、それら全ての諸悪の根源」だと思っています(言い過ぎたかな笑)。これについては別記事で書きたいと思います。

1つ、日本の就活事情がこの数字に表されているなーというデータを。文部科学省によると2015年度の日本の大卒就職率は97.3%です。めちゃめちゃ高い。高すぎる。

f:id:vncty:20170513051437p:plainデータは大学等卒業者及び高校卒業者の就職状況調査(文部科学省、2016年5月20日)より抜粋(pdf)

 北米の就活

たまに北米には新卒採用なんていう発想はない、と主張する方を見かけますが、それはかなり不正確です。差別に敏感な北米では、年齢、出生地、性別等を選考過程で聞く事が法律で禁止されているため、新卒採用というものをおおっぴらに出来ないのです。

大学を卒業した/もうすぐ卒業する、職歴(正社員として働いた経験)の無い人向けに"Entry Position"と呼ばれるものは多く準備されています。北米では平社員というものは存在しないため、部門、部署毎に違う資質を持った人材が募集されます。例えば、〇〇自動車の新卒採用というのが日本で行われるのに対して、北米では「〇〇自動車〇〇支部の〇〇部門の〇〇さんの部下として、〇〇についての仕事をする人が足りないからEntry Positionで二人採用しよう」という募集のされ方がされるわけです。 

応募/選考

Entry Positionは通年採用している会社もありますし、特定のシーズンにまとめて採用している会社もあります。一年生に内定を出す会社もありますし、卒業後何年か世界を放浪していた人に内定を出す会社もあります。この記事によると2016年に卒業したアメリカの大学生が卒業前に内定を受諾した割合は21%、卒業後6ヶ月以内に就職した割合は61%となっています。

架空のEntry Positionの採用ページ(日本語訳Ver)を適当に作ってみました(見苦しい日本語や設定の甘さが散見されるかと思いますが、ご容赦下さい)。ほとんどのEntry PositionはこのようなJob Postingを読み、オンラインで応募するところから選考が始まります。

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Job Postingを熟読した上で、Resume(履歴書)とCover Letter(志望動機書)とTranscript(成績証明書)を準備してオンラインでpdfを送信するところから選考は始まります。殆どの場合、名前と連絡先さえ書いておけば、形式は完全に自由です。変な話、色とりどりの履歴書を書いても通るときは通ります(私は会社のロゴのフォントと色を、履歴書のアクセントに使ったら書類選考に通ったことあります笑)。LinkedInやソフトウェアエンジニアであればGitHubのリンクを貼る人も多いです。

大体は 書類〇次審査(機械による選別、大企業のみ)→書類一次審査(人事による審査)→書類二次審査(部門/部署による審査)→電話/Skype面接→面接 という流れで選考が進みます。書類審査や面接の回数は応募人数によって大きく変わります。

重視されるもの

端的に言ってしまえば、can(出来る), want(やる気がある), fit(相性が良い), potential(成長の可能性がある)を選考の中で証明していくことが求められます。どのようにcan, want, fit, potentialを証明すれば良いかはJob Postingの中にヒントが隠されていることが多いです。日本のような終身雇用制度は無いので、loyalty(忠誠心)は重視されません。

can, want, fit, potentialを持っている事を証明するために、学生は下の9つの選考基準をうまく利用しなければいけません。 

1. 専攻 - can/wantを証明

超大事。その仕事に関係あるものを専門に勉強していないと相手にしてくれないことが多々あります。上のJob Postingの例で言えば、きちんとしたストーリーを作らないと、「ん? 君マーケティング専攻? なんでうちに応募してきたの?」と門前払いされてしまいます。ただ最近は、多様性を重視するという観点から、仕事と直接関係が無くても、幅広い専攻から雇うという事も増えてきたように思えます。

2. 学歴 - can/potentialを証明

超大事2。幾つかの機関から発表されている世界大学ランキングが、大体の目安となるのでは無いでしょうか。ただ、地理的な条件や、会社のカルチャーによってもどのような学歴が好まれるかは変わってきます。

ただ下に引用した話は信じがたい。これが事実だとしたら、圧倒的人不足となって世界は回らないんじゃないでしょうか笑。これは無駄にエリート指向の強い法律事務所とかだけじゃないですかね? まぁ確かに日本の大学の知名度は相当低いとは思いますが。

世界はあからさまな学歴主義だ。学歴と言っても東大とか早稲田とかではない。そういう大学名はよほど日本通の外国人でないと知らないだろう。世界に通用するブランド大学だけが「学歴」である。具体的には、ハーバード、エールなどのアイビーリーグにMIT、スタンフォードカルテックバークレー。米国以外ならオックスフォード、ケンブリッジくらいが「学歴」として認められる。

引用元: 世界は学歴・成績至上主義~「東大」なんて学歴とは言えない

3. コミュ力 - fit/potentialを証明

ポジションにもよりますが、ほとんどの場合ネイティブレベルの英語力や交渉力が求められます。TOEIC満点とかそういうレベルでは無く、専門用語の混ざったドキュメントをネイティブと同じスピードで読み、TPOに合った言葉遣いでコミュニケーションを取りながら相手の意図も汲み取り、正しい文法で簡潔な文章を書かなければいけません。

4. 業界/会社に対する知識 - want/fitを証明

これが求められているのは日本でも同じでしょう。ただ一歩踏み込んだ、専門的な知識を持っているかをテストされたり、実際に入社後に取り組むような問題を選考過程で解かされたり場合もあります。

5. GPA - canを証明

結構足切りされます。北米の大学は学生に割としっかり勉強させるので、学業の成績と入社後の成績に割と高い相関が見られるため、GPAは重視されます。

私は米系投資銀行で4ヶ月ほどインターンしていた時に、書類選考している場面を横から観察していましたが、「お、いい大学! ん? 割とBがあるな… はい、だめー笑」(5秒でゴミ箱へぽい)という場面を見ました。

6. 実務経験 - can/fitを証明

同じ業界/業種でインターンをして実務経験を積んだ経験は高く評価されますし、競争率が高いポジションほど実務経験は重視されます。営業職に応募した際に「なぜあなたは営業に向いていると思うのですか?」と聞かれた時に「私は〇〇で営業をした経験があり、3ヶ月間で〇〇人の顧客を獲得しました。また、〇〇のような点に私は営業の楽しさを感じました。」と答えられると一気に説得力が増しますよね。

7. コネ、推薦 - fitを証明

コネがあれば、書類で落とされる可能性を劇的に下げられます(面接ではあまり効果が無いかもしれません)。なので、学生はネットワーキングイベントに参加するなどして必死でコネを作ります。

過去にインターンをした会社の上司から推薦を貰えれば、選考プロセスを通して好印象を与えられます。特に狭い業界だと、インターンした会社の上司と面接官が知り合いなんていうこともありえます。

8. 課外活動 - fitを証明

ボランティア経験や、大学のスポーツチームで活躍した経験は重要視されます。アングロサクソン的価値観ではそのような活動をしないと人間的に成長できないと信じられているようです(そのような活動をすると本当に人間的に成長出来るかについての真偽はさておき)。

9. 一発芸的なスキル、趣味 - fitを証明

投資銀行インターンした時に聞いた話ですが、私の前にインターンしていた学生は2年生の時に学費の全てをカジノで稼いだそうです。 そのようなおもしろいエピソードや特殊なスキルを持っていると、競争率の高い中でも興味を惹け、目立つため強いです。カジノの例で言えば、しっかりとエピソードをまとめてストーリーを構成して話せば、頭の回転の早さやお金に対する嗅覚や度胸をアピールすることもできます。

写真や絵が趣味の人は、履歴書にインスタのアカウント貼ったりする人もいます。面接官も人間なので、仕事以外の話をしていて楽しい人と働きたいですよね。

役に立たないもの

1. 日本人、外国人であるという事

雇う側からしたら、日本と関わりのある仕事でない限り、日本人を雇うということ自体には何のメリットもありません。ビザの準備もめんどうくさいし、同じ資質を持った日本人とアメリカ人が並んでいたら確実にアメリカ人が雇われます。ましてや英語がネイティブレベルでなければ尚更です。

2. 日本的な就活礼儀作法

当たり前ですが、履歴書を手書きにするとか、ノック何回するとか、お辞儀するとか、リクルートスーツを着るとか、会社側からしたら不気味以外の何物でもありません笑。

まとめ

長々と書きましたが、北米での就活では、選考基準が明文化されており、明文化されているものを兼ね備えていることを自分なりの方法で証明するのが成功のコツです。入社後の仕事内容がはっきりと決められており、入社前の期待と入社後の現実のギャップや日本に比べて少ないでしょう。また、入社時期や選考時期も個人によってバラバラであり、個人のスタイルに合った就職活動が可能です。

しかし、新卒一括採用終身雇用制度は無く、スキルや専門性を発揮した経験が求められるケースが多いため、個人に求められる責任は大きいでしょう。

「あなた自身はどんな風に就活を進めたの?」「面接でどんなことを聞かれるの?」「選考基準を満たすために一般的な大学生はどんな努力をしているの? 北米の大学生ってみんなそんな必死こいて就活してるの?」「日本の就活のどこがおかしいと思うの? 逆に日本の就活システムが優れているところは?」といった点についてはまた別記事のネタにしたいと思います。